山下循環器科内科ニュースNo.127 201051日発行 (隔月発行)

 
   ◎高血圧治療薬の新しい流れ

 

 高血圧の治療は、塩分制限、有酸素運動、肥満是正、禁煙、節酒などの非薬物治療が大切ですが、何といっても治療の基本は薬です。降圧剤のうち第1選択薬は、血管拡張作用のあるカルシウム拮抗薬、利尿薬、昇圧物質のアンギオテンシンUを阻害するACE阻害薬やARBと呼ばれる薬、交感神経を抑えるβ遮断薬です。

 今までは、これらの薬は個々に販売されており、血圧が1剤でコントロールできない時は、2剤・3剤と使っていました。飲む患者さんとしては、だんだん錠剤の数が増える一方だったのです。ところが、最近になって、ARBと利尿剤の合剤ができたのを皮切りに、ARBとカルシウム拮抗薬の合剤、また、カルシウム拮抗薬とスタチンというコレステロール降下薬との合剤などが相次いで発売されてきました。また、高血圧だけでなく、糖尿病の薬同士でも合剤が予定されています。

 合剤は、薬の錠数が増えなくてすむことが最大の利点ですが、二つの薬のために効果も強く、その一方、2剤・3剤使うときよりも薬価が低く抑えられているので、患者さんの経済的負担も少なくてすむのも利点です。ARBと利尿剤の合剤はすでに長期処方ができるようになっています。今後、3剤の合剤も予定されており、高血圧を合剤で治療するという傾向は続くと思われます。

 

 

   ◎二次性高血圧症について

 NHKテレビの「ためしてガッテン」で二次性高血圧症のうち、原発性アルドステロン症という副腎皮質の腫瘍による高血圧が取り上げられて、患者さんからの問い合わせが相次いでいます。原因不明の高血圧症は本態性といわれ、高血圧症の90%を占めるといわれています。原因のある高血圧症を二次性高血圧症といい、このうち原発性アルドステロン症は高血圧のうち数%にあるといわれており、二次性の中では最多の病気です。副腎腫瘍による場合は悪い方を手術で取ってしまえば、高血圧は治癒し、その後は薬を飲まなくてすむ可能性があります。当院外来でも、原発性アルドステロン症のスクリーニング検査としてホルモンのアルドステロン上昇や、腎臓から出るレニン活性が押さえられることをチェックしています。(以上 院長)

 

 

   ◎肺炎について

*肺炎とは・・・肺炎は、がん、心臓病、脳卒中に続いて、日本人の死亡原因の第4位となっています。年齢別では、85歳以上では第2位、90歳以上では第1位と、高齢者にとっては最も注意が必要な病気と言えます。

*原因は・・・病気や疲労、不規則な生活、ストレス等で抵抗力が落ちている時に、病原微生物に感染すると、肺炎が起こりやすくなります。

*症状は・・・38度C以上の高熱(高齢者では熱が出ないことあり)、せき、たん、胸の痛み、食欲不振、倦怠感、頭痛などです。

*予防法は・・・規則正しい生活、ストレスや疲労をさけ、十分な休養と栄養バランスのとれた食事をとりましょう。

肺炎の引き金となる風邪やインフルエンザにかからぬよう、うがい、手洗い、マスクの着用をしましょう。

*ワクチンは・・・肺炎を予防する方法として「肺炎球菌ワクチン」があります。

市中での60歳未満の肺炎の原因菌は「マイコプラズマ」が多いのですが、70歳以上では、肺炎球菌が1番となっています。

この肺炎球菌ワクチンは「肺炎予防効果」と共に「肺炎になっても軽症ですむ」「抗生物質が効きやすい」などの効果もあります。

肺炎球菌ワクチンの効果は、接種後1ヶ月で最高値となり、その後4年間はあまり低下しません。5年後でもピーク時の80%と効果は持続し、その後徐々に低下していきます。

高齢の慢性疾患患者にインフルエンザと肺炎の両ワクチンを接種すれば、入院を63%、死亡を81%減らす、との海外報告もあり、インフルエンザワクチンとの併用が望ましい、とされています。

WHO(世界保健機関)は、肺炎球菌ワクチンの接種を推奨しており、アメリカでは、65歳以上の半数以上の人が接種しています。しかし日本ではワクチン接種に健康保険が利かないこともあり(一部市長村では公費助成あり)2000年の接種率はアメリカと比べると約1/10に過ぎません。また再接種は禁じられており、自費であっても一生に1回のみの接種となっています。

慢性の呼吸器疾患(慢性気管支炎・気管支ぜんそく・肺気腫等)や、慢性の内臓疾患(糖尿病・腎不全・肝硬変等)の方は、免疫力の低下により、病原微生物に感染しやすく、肺炎になりやすい、と言われています。この様な病気や高齢の方には、肺炎球菌ワクチンの接種をお勧めします。

当院でも接種出来ますので、お気軽に職員へお問い合わせ下さい。

(看護師 川野友美) 

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