山下循環器科内科ニュースNo.134  2011年7月1日発行 (隔月発行)


 山

201091日発行 (隔月発行)

◎心臓の音・

◎大動脈弁狭窄症の新しい治療法

 大動脈弁狭窄症とは、心臓の左心室から大動脈に血液が出る際に、逆流しないように存在している大動脈弁が狭くなる病気です。高齢社会の到来とともに、この病気が増えてきています。年齢とともに大動脈弁が硬く、厚くなり、弁が狭くなっていきます。弁が狭くなっていくのを止める薬はありません。米国では65歳以上の人口の2〜4%にみられるといわれています。

 大動脈弁狭窄症は、軽症のときはほとんど無症状ですが、ひどくなると息切れ、胸痛、失神、心不全が起こってきます。胸痛がでると、その後の余命は5年といわれており、外科手術しないと助かりません。弁を置き換える手術しか今まではありませんでした。高齢者では、心臓以外に肺や腎臓の悪い人も多く、手術ができずに、病状の進行を手をこまねいてみているだけということも多かったのです。

最近登場してきたのが、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)といって、バルーンカテーテルで狭くなった弁を開き、そこに人工弁をカテーテルで留め置くという方法です。この方法ですと、体への負担が少なく、リスクの多い人でも比較的安全に行えることが判っています。欧米ではすでに確立されつつある方法です。日本でも大学病院など専門病院で治験が行われており、近い将来に一般的な治療法になることが期待されています。ただ、全例でこの方法ができる訳ではなく、リスクの少ない人や、TAVIに適さない弁の状態の人はやはり手術になりそうです。       (院長)

◎虫刺され時の対処法について

季節も夏本番を迎えようとしています。今回は、虫(ハチ、ムカデ)に刺された時の対処法についてお話しします。まずハチに刺された場合、毒針に刺されることで生じる皮膚炎でときには生命に関わるような激しい全身症状をきたします。スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなどが原因になります。刺された際に皮膚に注入されるハチ毒による刺激や毒の成分に対するアレルギーが原因によって症状が出ます。

刺されるとまず強い痛みを感じ、皮膚が赤く腫れます。通常は1日以内に症状がおさまります。治療には局所のかゆみや発赤には抗ヒスタミン薬やステロイドの外用薬を塗ります。症状が強い場合は、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の内服、注射などを行います。刺された頻度や人の体質によってかなりの個人差があり、刺された直後から全身のかゆみや息苦しさ、気分不良などの全身症状を生じることがありひどい場合には血圧が低下してショック状態になり死に至ることもあります。これをアナフィラキシーショックといいます。

ハチ刺されに気づいたら、まず安静にして局所を冷やして様子を見ます。気分不良や息苦しさ、意識障害などの全身症状が見られた場合は、直ちに救急車を呼んでください。又、全身症状がなくても発赤や腫れ、かゆみや痛みが強い場合は医師の診察を受けてください。当院での処置法としてハチに刺された箇所に注射針で少しだけ穴を開け吸引器で毒を吸い出します。その後、抗ヒスタミン剤を塗布します。

ハチに刺されないようにするには、屋外作業の時など蜂の巣には十分注意を払いむやみに近づかないようにしましょう。秋にはハチの攻撃性が高まるので特に注意が必要です。できるだけ肌の露出を避け、黒いものや香水等はハチを呼び寄せることになるので気をつけましょう。なおアンモニアを塗るという対応は効果が実証されていない為おすすめできません。

 次にムカデに咬まれた時の対処法です。ムカデの顎肢と呼ばれる牙に咬まれ、皮膚に毒液が注入され生じます。ムカデの特性は暗く湿った場所を好みます。家屋では浴室や、靴の中などに潜んでいますので、湿気の多い季節はとくに注意してください。症状は咬まれた直後から激しい痛み、局所の発赤、腫れを生じます。時にリンパの流れに沿って、咬まれたところから体の中心に向かって線状に発赤、腫れ、痛みが生じ、リンパ節が腫れることがあります。治療は咬まれたところを冷やし、抗ヒスタミン剤やステロイド剤を塗布します。じんましんなどのアレルギー症状が出た場合は病院を受診してください。

今回、代表的な2つの虫刺されについてお話ししました。もしもの時の対処法を知り、楽しい夏をお過ごしください。(看護師 芦刈なお子)

    新入職員自己紹介

この度、523日よりデイケアの厨房で働き始めました、井 英子です。4年間、出産育児のため休職しておりましたが、子供が3歳になり、母親から友達の中に入っていくのを感じ、私も社会の中へと復帰しました。今は覚えること慣れることの毎日ですが、食べていただける食事の工夫、ケアする食事の工夫をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

    熱中症にご注意

また、暑い夏がやってきました。早くも熱中症で体調を壊す方が外来にお見えになっています。熱中症になると、筋肉痛や大量の発汗、さらには吐き気や倦怠感などの症状が現れ、重症になると意識障害などが起こります。予防のためには、水分だけでなく塩分もこまめに補給し、室内環境を調節し、外出時には日傘や帽子の着用、日蔭の利用、こまめな休憩、通気性の良い衣服の着用などに気を配りましょう。(院長)


 

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